大桃のプロフィールを知っていただくには、その走りを助手席から体験してもらうのがいちばん手っ取り早いかもしれません。
大桃千明の助手席を体験
(プレイドライブ誌1986年2月号より)左の中速コーナーが近づいてきた。3速フラットアウトから、かなり強烈なブレーキング、そして2速へとシフトダウン。的確なスピードコントロールで、車速はコーナーの少し手前で、早すぎず遅すぎずのスピードまで落ちた。
ステアリングを右へチョンと切る。それに反応して、EP71の荷重が少し左側へ移動し始めた瞬間、今度は左へすばやく切り込む。フェイントモーショ ン風のステアリングワークだ。その操作スピードは速く、しかも操作量が少ないために、クルマは大きな姿勢の変化を見せない。ただ、荷重が左へ、そしてその 反動によって瞬間的に右へとリズミカルに動くことを感じ取れるだけだ。
この挙動変化で、今度はすかさず左足がブレーキペダルに載った。左足ブレーキだ!そのとたん、リアがスムーズに振り出され、姿勢が大きく変わる。そして、フロントウィンドーにはコーナー・イン側の風景が写りだす。
すると大桃は、コーナーのRに合わせながら、絶妙なステアリングワークでリアの滑りをコントロールしつつ、クリッピングポイントを直線的にねらえる姿勢を作り出した。このあたりのステアリングワークは、さすがにFFの大ベテランで、素早く、かつ正確だ。
ステアリングは、クリッピングポイントのかなり手前からすでに直進状態になっている。そして、EP71はフロントより若干リアを多く滑らせた4輪ドリフトの状態のまま、みるみるクリッピングポイントに近づいていく。
そこからの立ち上がりが速い。大桃のFFドライビングテクニックには、2つのポイントがあって、そのひとつがステアリングを切り込み過ぎないこと。 そしてもうひとつが、コーナーリングでエンジン回転数を落とさないようにすることだ。エンジン回転数を落としてしまうと、ローパワーなBクラス車はどうし ても立ち上がりが苦しくなる。
そこで、常にアクセルオンの状態でいるために使っているのが、左足ブレーキ。それをマスターするために、ふだんからクルマに乗ったときは必ず左足でブレーキを踏む練習をしていたそうだ。今はかなり自在にコントロールできると言う。
だから、コーナーの立ち上がりは速い。常にトルクバンドに載っているエンジンはアクセルを踏み込みさえすればグングン加速していく。FFカーのローパワーをフルに生かすための走り。これが大桃の速さの秘密なのかもしれない。
大桃千明の主な戦績
1982年
全日本ラリー選手権 第7戦ブルーラインラリー(秋田) Bクラス優勝
1983年
全日本ラリー選手権 第4戦チボーラリー(北海道) Bクラス優勝
全日本ラリー選手権Bクラス シリーズ2位
1984年
全日本ラリー選手権 第6戦チボーラリー(北海道) Bクラス優勝
1985年
全日本ラリー選手権 第2戦DCCSウインターラリー(群馬) Bクラス優勝
全日本ラリー選手権 第4戦ACKスプリングラリー(大分) Bクラス優勝
1985年
全日本ラリー選手権Bクラス シリーズチャンピオン
1987年
全日本ラリー選手権 第1戦DCCSウインターラリー Bクラス2位
1988年
全日本ラリー選手権Bクラス シリーズ3位
1990年
全日本ラリー選手権Bクラス シリーズ4位
1991年
全日本ラリー選手権 第3戦ACKスプリングラリー(大分) Bクラス優勝
1992年
全日本ラリー選手権 第7戦モントレー(群馬) Bクラス2位
全日本ラリー選手権 第9戦MCSCハイランドマスターズ(岐阜) Aクラス2位
1996年
全日本ラリー選手権 第2戦RTNザ・ナイトin荘川(岐阜) Aクラス優勝
全日本ラリー選手権 第3戦ザ・ラリーIN北海道(北海道) Aクラス3位
全日本ラリー選手権 第5戦DCCSオータムラリー(群馬) Aクラス優勝
1996年
全日本ラリー選手権第2部門Aクラス シリーズ3位
1997年
全日本ラリー選手権 第1戦MCSCハイランド冬(長野) Aクラス優勝
全日本ラリー選手権2輪駆動部門 Aクラス シリーズ6位
1998年
全日本ラリー選手権 第4戦群馬アルペンラリー’98(群馬) Aクラス3位
全日本ラリー選手権2輪駆動部門Bクラス シリーズ3位
2000年
全日本ラリー選手権 第6戦イースト九州 2000(佐賀) Bクラス3位
2001年
全日本ラリー選手権 第2戦RTNザ・ナイトin荘川(岐阜) Bクラス3位
2001年
インターナショナルラリー・イン北海道 参戦
2002年
APRC ラリー北海道 参戦
2003年
APRC ラリー北海道 総合25位
2004年
WRC ラリージャパン 参戦
2006年
WRC ラリージャパン N/2クラス2位